【第21回】火成岩とペグマタイト

「火成岩(かせいがん)」は、マグマが冷えて固まった岩石の総称です。

これは、マグマが固まった場所によって大きく2種類に分けられます。

地表付近や地表に噴出して固まった「火山岩(かざんがん)」
地下に溜まった状態で固まった「深成岩(しんせいがん)」


さらに火成岩は、マグマの成分である二酸化ケイ素(SiO₂)の量によっても分類されます。

SiO₂を多く含むマグマからできるものは、
火山岩では「流紋岩(りゅうもんがん)」
深成岩では「花崗岩(かこうがん)」と呼びます。

同様に、SiO₂が比較的少ないマグマは、
火山岩:「玄武岩(げんぶがん)」
深成岩:「斑れい岩(はんれいがん)」

SiO₂の量がその中間的なマグマは、
火山岩:「安山岩(あんざんがん)」
深成岩:「閃緑岩(せんりょくがん)」
と呼んで区別しています。

つまり、火成岩は「どこで固まったか」「どのような成分のマグマからできたか」という2つの視点から分類されています。

マグマの中ではSiO₂が増えるほどケイ酸塩の構造がつながりやすくなり、これが粘り気となって、ドロドロしたマグマになります。

逆に、SiO₂量が少ないと粘り気の弱いサラサラしたマグマになります。

数字だけを見ると、SiO₂量の違いはそれほど大きくないように感じられますが、わずか10数%の違いでも、マグマの性質やできる岩石には大きな差が生まれます。


SiO₂に富むマグマでは石英長石が形成されやすく、そのような白っぽい鉱物が多いと、岩石全体も白っぽく見えます。

一方で、マグマのSiO₂量が減少するほど石英や長石が少なくなり、鉄やマグネシウムを多く含む鉱物、たとえば輝石角閃石カンラン石黒雲母など黒っぽい鉱物の割合が相対的に多くなります。

そのため、岩石全体も黒っぽく見えます。


上図の見方としては、『流紋岩/花崗岩』エリア、『安山岩/閃緑岩』エリア、『玄武岩/斑れい岩』エリアというように、対応する火山岩と深成岩を一つの組成領域として捉えます。

その組成領域においてどの鉱物がどの程度現れやすいかを、左のパーセンテージ(%)と鉱物分布の帯から読み取ります。

火山岩

マグマは冷えていく過程で、温度に応じて固まりやすい成分から順に結晶化していきます。

地表付近や地表に噴出したマグマの場合、冷却が非常に速いため、結晶が大きく成長する前に全体が固まってしまいます。

そのため、火山岩の多くは、肉眼では見えにくい微細な鉱物結晶の集合体として形成されます。


また、冷却がきわめて速く、原子が規則正しい結晶構造を作る時間が足りない場合は、その結晶化しきれなかった部分がガラス質として固まります。

ガラス質

ガラス質の岩石は、流紋岩質のマグマでよく見られます。

これは、流紋岩質マグマがSiO₂に富み、粘り気が強い性質をもつためです。

もともと粘り気の強いマグマでは、内部の成分が自由に移動しにくく、これが結晶の成長を妨げる要因となります。

さらに冷却が速ければ、成分が結晶として並ぶ時間を十分に得られないまま固まってしまうため、ガラス状の火山岩ができやすくなると考えられます。


また、流紋岩質マグマは、成分的には石英や長石をつくる材料を多く含んでいますが、急冷によって結晶が十分に成長しない場合、それらは白っぽい鉱物粒として現れにくくなります。

その結果、明るい色味が目立たず、少量しか含まれない鉄成分や微細な鉄酸化物などの影響が見た目に反映されやすくなるため、外観は黒〜暗色を示すものが多く見られます。

深成岩

一方、地下深くにとどまったマグマは、周囲の岩石に包まれた状態で、長い時間をかけてゆっくりと冷えていきます。

そのため深成岩は、肉眼でも確認できる大きさの結晶として形成されます。

しかし、先にできた結晶のすき間を埋めるように、後から別の鉱物が成長していくため、それぞれの結晶が自由に大きく伸び広がれるわけではありません。

つまり、火山岩よりは大きな結晶ができるものの、ひとつひとつの結晶が自由に大きく育つには限界があります。



火山岩も深成岩も、結晶の大きさに違いはあれど、複数の鉱物が互いに組み合わさり、ひとかたまりの岩石として固まっています。

これが、一般的な火成岩の形態です。

名前の由来

たくさんの岩石名がでてきましたが、名前の由来を知っておくと、岩石の特徴と結びつけて覚えやすくなります。

粘り気が非常に強くドロドロとしたマグマが地表を流れたときにできた「マグマの引きずられた流れの跡」が、岩石の表面に美しい縞模様(流理構造)としてハッキリ残っている見た目の特徴から名付けられました。

南米の「アンデス山脈」に大量に分布している岩石であることから、その英語名である「Andesite(アンデサイト)」を明治時代の日本の学者が「アンデスの岩」と直訳したことでその名がつきました。

兵庫県にある「玄武洞」に由来する名前です。
玄武洞では、マグマが冷えるときにできる規則正しい六角柱の割れ目(柱状節理)がよく見られます。
その形が中国の伝説の神獣「玄武(黒い亀と蛇が合体した神)」の甲羅模様に似ていることから、「玄武洞」という名前がつけられました。
その後、この玄武洞の岩石にちなんで「玄武岩」という名前が使われるようになりました。

中国の建築石材の名産地「花崗」という地名に由来しており、文字通り「花のようにさまざまな結晶(石英・長石・黒雲母)が華やかに散らばった、非常に硬い岩石」という意味を持っています。

「閃」という漢字に ”きらめく” という意味がある通り、この岩石に多く含まれる「角閃石(かくせんせき)」が、光に当たると緑黒色にキラキラときらめく視覚的な性質を持っていることからその名がつけられました。

「斑」はまだら模様を意味し、全体的には輝石など有色鉱物が多く黒っぽいベースでありながら、そこに斜長石などの白い結晶がポツポツと斑点状に見えている特徴から命名されました。

ペグマタイトは、火成岩の一種です。

ただし、深成岩が形成される過程において、いくつかの条件が揃ったときにのみ生まれる ”特殊な火成岩” で、大きく成長した結晶』から成ります。

特に、花崗岩質のマグマに由来するものが多いため、「巨晶(きょしょう)花崗岩」と呼ばれることもあります。

ペグマタイトの鉱物は、結晶ごとの境界がはっきりしていて、純度の高い結晶が採れるので、古くから宝石や希少鉱物といった有用な鉱物の供給源になっています。

これを「ペグマタイト鉱床」といいます。

花崗岩質のマグマは粘性が高いため、通常は成分が自由に移動できず(集まりにくい)、結晶が大きく育つ前にその場その場で固まってしまいます。

ところが、ペグマタイトの環境条件が満たされている場合、その形成プロセスの最後で変化が起きます。

形成の最終段階では、マグマの大部分はすでに固まっていて、結晶化に使われない成分(希少元素や水分などの揮発性成分)が、残りのマグマの中で濃縮されている状態です。

それらの成分は、やがて結晶の隙間に ”不純物” として紛れ込んだり、ガスとなって抜けていくのですが、ペグマタイト環境では、そのまま極限まで濃縮され続けます。

その結果、閉じ込められた高濃度の揮発性成分(主に水分)によって、ドロドロだったマグマがサラサラと流動するマグマに変化します。

これは、水分によって薄まったのではなく、H₂Oを中心とする揮発性成分が、粘り気のもととなるSiO₂の結びつき(ケイ酸塩の網目状構造)を切り離す役割を果たし、粘性が下がるためです。

そして、この変化が成分の移動をスムーズにし、わずかに残された結晶の「核」に対して、広範囲から効率良く成分を集めることが可能になるため、ペグマタイトでは急速に大きく成長した結晶ができます。

さらに、本来なら不純物程度にしか存在し得なかった希少元素も、高濃度に達すると、結晶の構成要素として組み込まれ、特定の鉱物を構築する存在となります。

例えば、以下のような希少元素を主成分に持つ鉱物が形成されます。

リチウム(Li):リチア雲母(レピドライト)、リチア輝石
ベリリウム(Be):ベリル

同様に、揮発性成分のフッ素やホウ素も鉱物として結晶化します。

フッ素(F):トパーズ
ホウ素(B):トルマリン

これらは、ペグマタイト以外でも微細な結晶として存在することはありますが、ある程度の大きさを持って産出されるという意味では、事実上『ペグマタイト特有の鉱物』といえます。

ペグマタイトの中に、晶洞(ジオード)が形成されることがあります。

一般的な晶洞は、ガスの抜け跡や割れ目など、さまざまな要因でできた岩石中の空洞に、シリカなどを含んだ熱水や地下水が入り込み、その内部でゆっくり結晶化することで形成されます。

つまり、「空洞が先にでき、あとから成分が入り込む」という形成プロセスです。

一般的な晶洞



それに対し、ペグマタイトの晶洞は、閉じ込められた高濃度の揮発性成分がマグマから分離し、局所的に集まってできた空間で形成されます。

このとき、揮発性成分は超臨界(ちょうりんかい)に近い状態(液体とも気体ともいえない状態)にあって、周囲のマグマ残液から成分を取り込みながら空間内で結晶化していきます。

すなわち、「はじめから成分があり、空洞の形成、そして結晶化」と連続したプロセスの中にあります。

そこでは、濃縮された原材料(揮発性成分、希少元素、マグマの残液の成分)が、”閉じ込められた” 空間の中で自由に成長するため、不純物の少ない宝石品質の結晶が形成されやすくなります。

ペグマタイト晶洞



ペグマタイトの要点

形成のポイント

できる鉱物の特徴

3. 終わりに

今回は、ペグマタイトへ話を進めるにあたって、火成岩の説明から入りました。

火成岩の理解は、鉱物を深く知るうえで必要な知識といえます。

とくに花崗岩や玄武岩などのワードは、鉱物の説明文などで頻繁に出てきます。


そしてペグマタイトは、レピドライト、スポデューメン(リチア輝石)、ベリル、トパーズ、トルマリンなど、特有の鉱物を生み出す環境としても重要です。


次回はいよいよ、雲母のなかでも特殊な構造を持つレピドライトが、このペグマタイト環境でどのように形成されるのかを、詳しく見ていきます。

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