【第10回】石英の仲間たち

石英は、微量の不純物内包物の有無により、多種多様な形態を持っています。


石英の一形態といえる「石英グループ」と
ちょっと違うけど、石英と関係が深い石をまとめて
相関図にしたものがこちらです⬇︎



石英グループ内の鉱物はみな、

組成式:SiO₂(二酸化ケイ素)
結晶系:六方晶系

で、その基本構造は同じです。


鉱物的にどのような違いがあるのか詳しく見ていきます。


顕晶質(けんしょうしつ)

水晶

水晶は石英のなかでも、とくに透明度が高いものを指します。


そして、クラスターやポイント(六角柱)がわかりやすい例ですが、

結晶が目に見える大きさまで成長しているのが特徴です。


この結晶が目に見える状態であることを「顕晶質(けんしょうしつ)」といいます。


また、それぞれがひとつの結晶として成り立っているので、
単結晶(たんけっしょう)」と呼ばれます。



このように、水晶は ”結晶” のイメージをもっとも具体的に表現している鉱物であるといえます。



ちなみに、ビーズやタンブルなどの加工品の場合でも、
水晶であるなら ”顕晶質” で ”単結晶” ということになります。

なぜなら、透明度が高いからです。
次の石英の説明を見るとわかります。



石英

一般的に、水晶と区別して ”石英” と呼んだ場合、

半透明多結晶(たけっしょう)の状態のものを指します。


多結晶とは、細かい単結晶(結晶粒)が集まって形成された状態です。



石英の場合、水晶ほどには成長していないが比較的大きい結晶から

肉眼では確認しづらいほど微小なものまで

様々な大きさの結晶が一つのかたまりを形成しています。

分類的には、顕晶質です。


石英のなかで、水晶のような綺麗な単結晶を形成するのは限られたケースです。


ほとんどの石英は多結晶の状態で存在しています。



また石英に限らず、多結晶の鉱物は、

単結晶のように一様に連続した結晶格子ではなく、

細かく分断された結晶格子が集まったものであるため、

光を通しにくく、透明は低くなります。


また、個々の結晶粒の隙間に不純物が入り込みやすいことも

透明度を低下させる要因となります。


したがって、多結晶鉱物は半透明から不透明であるのが一般的です。

このように、”水晶” が透明なのは単結晶であるがゆえ、なのです。




アベンチュリン

アベンチュリンは石英と同様に、細かな結晶粒の集合体です。

基本的な構造は石英そのものですが、

不純物としてフックサイトなどが混入することで、

特徴的な緑色の発色であったり、キラキラとした輝きを示します。


ここで言うアベンチュリンは、グリーンアベンチュリンクォーツを指しています。
詳しくはこちら




潜晶質(せんしょうしつ)

カルセドニー

カルセドニーは、非常に微細な結晶粒(石英)の集合体です。


多結晶という意味では石英と同じですが、カルセドニーは石英よりもさらに細かい結晶で形成されています。


カルセドニーのように結晶が目に見えないほど微細な状態

潜晶質(せんしょうしつ)」といいます。

肉眼またはある程度の拡大鏡で見えるレベルが ”顕晶質”
顕微鏡などを使わないと見えないレベルが ”潜晶質”
です。


水晶は拡大してもただ結晶の一部分を見ているだけです。


カルセドニーは潜晶質の石英の総称なので、

広い意味では、アゲートやジャスパーもカルセドニーの一種といえます。



ただ一般的に ”カルセドニー” といえば、半透明色が均一なものを指します。


カルセドニーのバリエーション

カーネリアンオレンジから赤色、赤茶色が特徴的なカルセドニーで、色はの含有量によって変わります。

クリソプレーズ明るい緑色のカルセドニーで、その色はニッケルの含有によるものです。




アゲート

カルセドニーのなかでも、縞模様のあるものを「アゲート」と呼んでいます。

和名で ”瑪瑙(めのう)” と言われているものです。


この独特の模様は、潜晶質の石英結晶が層状に積み重なって形成されたものです。


その過程は、長い年月をかけてゆっくりと結晶化するなかで、

不純物の種類や含有量が異なる層が少しずつ蓄積していくことで生じます。

「木の年輪」のイメージに近いです。
プロセスは違いますが、時間の経過とともに異なる層が積み重なっていく点で共通しています。



アゲートには「晶洞(しょうどう)」または「ジオード

と呼ばれているものがあります。


晶洞とは、岩石や鉱物の内部にできた ”空洞” のことを指し、

この空洞は、結晶が成長する空間としての意味を持ちます。


アゲートの晶洞は、岩石内の空洞にアゲート層が形成されてできた晶洞です。

なので、ただ穴が空いて空間ができている状態というより、
そこに新たな結晶が形成された空洞と捉えるのが一般的です。


また、アゲートの晶洞の中心部に、水晶などが形成されている場合もあります。


  1. 岩石の内部に何らかの原因で空間(空洞)ができる。
    (たとえば火山活動や水の浸食などの地質学的プロセス

  2. その空洞に SiO₂ を含んだ地下水などが流入する。
    (最初から SiO₂溶液を閉じ込めた状態で空洞が形成される場合もある)

  3. 岩石の壁面に付着するかたちで、SiO₂溶液が少しずつ結晶化していく。

  4. 時間の経過にともなって、溶液の状態は変化するため層となって積み重なる。
    (アゲート層が形成される)

  5. 結晶化の最終段階で、SiO₂溶液の変化が著しい場合
    (SiO₂の濃度変化や環境条件の変化などが要因)

    層の中心部に、アゲート以外の鉱物として結晶することがあります。
    (水晶が多い)



ちなみに、アメジストドーム(アメジストジオード)も晶洞です。



ジャスパー

ジャスパーは、カルセドニーやアゲートに比べて不純物の含有量が多い石英鉱物を指します。


そのため、不透明であり不純物の影響による独特な色と模様が特徴的です。

特に赤色のジャスパーは一般的で、
この色は鉄酸化物によるものです。




また、その模様はランダムで、アゲートのような均一な縞模様ではなく複雑な模様を示します。




非晶質(ひしょうしつ)

オパール

オパールも石英の仲間として扱われることが多いですが、少し特殊な存在です。


正確には鉱物ではない?

オパールは結晶構造を持たない非晶質のケイ酸塩です。


結晶質ではないので、定義のうえでは ”鉱物” に分類されません。


ただ、鉱物と同様に扱われることから ”準鉱物” と呼ばれたりします。

鉱物学の研究対象という意味では、事実上 “鉱物”です 。


主成分の中に水分を含んでいる

組成式(化学式)は、SiO₂·nH₂O です。


つまり、水分を含んだ二酸化ケイ素で構成されています。


式中の n は変数で、一定の値ではありません。



オパールの水分含有量は通常、全体質量の3%から21%の範囲にあります。


したがって、この “n” の値は、個々のオパールによって変わります。


オパールの二酸化ケイ素(SiO₂)は、

結晶の最小単位である単位胞(たんいほう)よりも小さい粒子(珪酸球)です。



この珪酸球が規則正しく配列することで、光の干渉による「遊色効果」が生じます。


このようなオパールを、「プレシャスオパール」と呼びます。


対して、珪酸球が不規則な配列をしているため、遊色効果を持たないオパールを

コモンオパール」と呼びます。



オパールは低温の地下水中でケイ酸塩が沈殿して形成されることが一般的です。



細かい粒の集まりといった表現が多いので、
まとめるとこんな感じです。




オブシディアン

オブシディアンは、非晶質(ガラス質)の岩石で、その構造は溶岩急速な冷却と固化によって形成されます。


その形成プロセスでは、SiO₂ が無定形のガラス状態になり、結晶や珪酸球のような微細な粒子は形成されません。

ガラス質について詳しくはこちら


テクタイト

テクタイトは、隕石の衝突によって地表面が高温で溶解し、その後に急速に冷却されて形成されるガラス質の物質です。



岩石(がんせき)

クォーツァイト

クォーツァイトは岩石で、砂岩が高圧と高温の条件下で変成作用を受けることによって形成されます。


その主要な成分は石英ですが、岩石としての特性(硬さ、耐久性、構造)は石英鉱物自体とは異なります。


つまり、石英は単独の鉱物であり、
クォーツァイトは変成作用を受けて再結晶した石英で構成された岩石です。

クォーツァイトについては、こちらでも言及しています。





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