【第22回】レピドライト

レピドライト(リチア雲母、鱗雲母)

化学式:K(Li,Al)₃(Si,Al)₄O₁₀(F,OH)₂
結晶系:単斜晶系
色:紫色〜ピンク色
モース硬度:2.5〜3

レピドライトは、リチウム(Li)を豊富に含む3八面体型の雲母です。

以前は独立した鉱物名として扱われていましたが、現在はトリリチオナイト(Trilithionite)とポリリチオナイト(Polylithionite)間の固溶体を表す系列名として使われています。

構造内に微量のマンガン(Mn)が不純物として取り込まれることで、紫色~ピンク系の特徴的な発色が現れます。

「レピドライト」という名前の由来は、ギリシャ語で「鱗(うろこ)」を意味する「lepidos」と、「石」を意味する「lithos」です。

キラキラした鱗状の結晶が集合した形態で産出することが多く、日本では「鱗雲母(りんうんも)」と呼ばれています。

レピドライトは、主に花崗岩質ペグマタイトから産出する雲母です。

ペグマタイトは、深成岩の形成プロセス末期に、温度や圧力などの諸条件がそろった場合に生まれる特殊な岩石です。

ペグマタイトでは、希元素や揮発性成分など、通常の岩石では鉱物の主な構成要素になりにくい元素が濃集し、それらを主要成分として結晶構造内に取り込んだ鉱物が形成されることがあります。

そのようなペグマタイトに特徴的な鉱物のなかで、リチウムを主成分に持つ雲母がレピドライトです。

ペグマタイトの元となる花崗岩質マグマでは、石英や長石などとともに、黒雲母が形成されることも多くあります。

黒雲母では、鉄(Fe)マグネシウム(Mg)が主な構成元素として取り込まれます。

また、条件によっては角閃石や輝石なども形成され、そこでもFeやMgが使われます。

そのため、結晶化が進むにつれて、マグマ残液のFeやMgの量が減少していき、相対的にアルミニウム(Al)量のほうが多くなっていく傾向があります。

そのような形成末期の残液では、黒雲母よりも白雲母が形成されやすい成分環境となっています。


ここからさらに、リチウムの濃縮をともなうペグマタイト環境下へ進行した場合、単なる白雲母だけでなく、リチウムを含んだ雲母が形成されるようになります。

これは、リチウムがもはや無視できない存在であり、雲母の結晶構造内にリチウムを取り込んだ組成のほうが、その成分環境では安定になるためです。

「レピドライト(系列)」というのは、このリチウムを含んだ雲母のうち、リチウム含有量が一定の範囲内にある雲母を指しています。

リチウムは、雲母の構造内で八面体層の中心イオンの場所(八面体席)に取り込まれます。

白雲母であれば、アルミニウム(Al³⁺)が入っている場所です。

白雲母:KAl₂AlSi₃O₁₀(OH)₂  ※2八面体


この八面体席は、

2八面体型:3価の陽イオン ×2 (空位1)
3八面体型:2価の陽イオン ×3

で構成されるのが一般的です。

このとき、八面体席の合計電荷は+6になるように配置されていて、多くの場合、それぞれ同じイオンが複数入ります。


リチウムの場合、1価の陽イオン(Li⁺)なので、単純にここに入ることは難しく、いくつか全体のバランスを調整する必要が生じます。

これをまず、化学式で確認すると、アルミニウムと組み合わさって、3八面体型の構造をしているのがわかります。

レピドライト(一般式):K(Li,Al)₃(Si,Al)₄O₁₀(F,OH)₂  ※3八面体

(Li,Al)₃ は、「リチウムとアルミニウムで合計3つ」という意味です。

なぜ、このような構造をとるのでしょう?

価数の低いリチウム(Li⁺)が入るということは、それを補う必要があります。

価数の高いアルミニウム(Al³⁺)と組み合わさり、なおかつ、空位を持たない3八面体型をとるのは、電荷バランスを調整するうえで成立した構造です。


ここでまず、3八面体型の八面体席に、リチウムとアルミニウムが入った場合の組み合わせを考えてみます。

Li ×1:Al ×2 = LiAl₂  合計電荷:+7
Li ×2:Al ×1 = Li₂Al  合計電荷:+5
Li ×3:Al ×0 = Li₃   合計電荷:+3

仮に、アルミニウムを伴わずに、リチウムだけの場合(Li₃)、合計電荷が低くなり過ぎて、調整が極めて困難になります。

組み合わせとしては、安定する+6との差異が±1におさまっている LiAl₂Li₂Al の2パターンが現実的な調整範囲といえます。

ただ、どちらにせよ、単一のパターンで構成すると、電荷が一方に偏ることになります。


そのため、レピドライトの構造では、この2つを八面体層全体で組み合わせて平均組成として考えます。

つまり、差異が±1のパターンを組み合わせることで偏りが平準化されて、合計電荷を平均値として調整することができます。


たとえば、LiAl₂Li₂Al の2パターンを50:50の割合で組み合わせた場合、層全体では差異が0になります。

このとき、八面体席の合計電荷は、平均+6の計算になり、安定することができます。

例として挙げた LiAl₂Li₂Al が50:50の割合、つまり、層全体にちょうど半分ずつ分布しているとき、八面体席はどう表されるのか?

これは、平均組成を計算します。

この場合、半々であるから、単純に足して2で割った値になります。

LiAl₂ + Li₂Al
= Li₃Al₃ ÷ 2
= Li₁.₅Al₁.₅

原子が1.5個というのはあり得ないですが、これは「1.5個分に相当する」という意味の『割合』を表しています。


そして、この平均組成が Li₁.₅Al₁.₅ の八面体席をもつ鉱物が、「トリリチオナイト」です。

トリリチオナイト:KLi₁.₅Al₁.₅AlSi₃O₁₀(F,OH)₂ ※端成分


トリリチオナイトは、レピドライト系列のひとつの起点となる理想的な端成分です。

系列の範囲内では、リチウム含有量が最も少ない側の端になります。


ここを起点に考えると、レピドライト系列は少しずつリチウムの含有量が増えていく方向へ進みます。

それは、LiAl₂Li₂Al が50:50の割合で分布していたところから、Li₂Alのほうが分布比率で多くなっていく方向です。


その進んだ先では、概念上、分布が 0:100 の割合、つまり、層全体がすべて Li₂Al になります。

このときの組成を表しているのが、もう一方の端である「ポリリチオナイト」という鉱物です。

ポリリチオナイト:KLi₂AlSi₄O₁₀(F,OH)₂ ※端成分


理想的な端成分であり、八面体席の平均組成もそのまま Li₂Al で表されます。

これが、レピドライト系列で最もリチウム含有量が多い側です。

トリリチオナイトからポリリチオナイトまでの範囲は連続固溶体を形成し、その系列を総称して「レピドライト」と呼びます。

ここで、八面体席の合計電荷に話を戻すと、分布によって電荷の偏りを平準化しているとはいえ、平均値で+6になるのは、端成分のトリリチオナイトだけです。

前述したように、ここを起点にリチウム量が増加し、

Li₂Al  (合計電荷:+5)

の割合が徐々に増えていく分布になるため、それだけ電荷不足の方向に偏っていくことになります。


レピドライト系列全体でみると、電荷の平均値は、

トリリチオナイト +6 ≧ 電荷平均値 ≧ +5 ポリリチオナイト

の範囲内で推移しているので、八面体席は、ほとんどの場合が電荷不足に陥っています。


この電荷不足を補っているのが、四面体席の「Al置換の量」です。


雲母の基本構造』で述べたように、四面体席では一部の Si⁴⁺(ケイ素)が Al³⁺(アルミニウム)に置き換わることで電荷不足が生じていて、このことが、結果的に層間のカリウム(K⁺)を保持している力になっています。

リチウム量の増加によって八面体席に電荷不足が生じると、かわりにこのAl置換による電荷不足が減り、層状構造全体としてのバランスを保ちます。

つまり、八面体席のリチウム量四面体席のAl置換量が連動することで調整をはかっています。

この関係を化学式で確認すると、

トリリチオナイト:
KLi₁.₅Al₁.₅AlSi₃O₁₀(F,OH)₂
ポリリチオナイト:
KLi₂AlSi₄O₁₀(F,OH)₂

レピドライト(一般式):
K(Li,Al)₃(Si,Al)₄O₁₀(F,OH)₂

端成分のトリリチオナイトは、八面体席が Li₁.₅Al₁.₅ = 平均値+6 の安定状態であるため、四面体席への影響がなく、Al置換を保った AlSi₃ の形です。

もう一端のポリリチオナイトでは、理想式上は八面体席が完全に Li₂Al = 平均値+5 となり、四面体席はAl置換が全くない Si₄ となります。


この範囲内であるレピドライト系列は、それぞれ次の範囲で推移します。

八面体席:Li₁․₅-₂Al₁․₅-₁
四面体席:Si₃-₄Al₁-₀

この範囲をわかりやすく、包括した形で表したのが、

(Li,Al)₃(Si,Al)₄

という一般式です。

リチウム含有量が、端成分のポリリチオナイトで最大(Li₂)となるのは、雲母の構造を維持できる上限だからです。

一方、下限側では、端成分のトリリチオナイト(Li₁.₅)よりさらにリチウム量が少ない構造も成り立ちます。

ただしこれは、レピドライト系列ではなく、リチウム白雲母という範囲になります。

そして、その延長線上にあるのが、白雲母です。

含リチウム白雲母とは、大まかには、「白雲母」と「レピドライト」の要素が、さまざまな比率で混ざり合った構造をしているといえます。

しかし、それは目に見えて白雲母とレピドライトが共生しているのではなく、微細な結晶の中でそれぞれの構造要素が分布しているという状態です。


雲母の結晶構造内にリチウムを取り込む場合、レピドライトのように3八面体型をとるのが自然です。

そして、そのリチウム含有量の下限である Li=1.5 から、上限の Li=2 まで増加していく方向は、Al置換量と連動しながら進んでいく経路です。


これと同じように、Al置換量と連動して減少方向(Li < 1.5)へ進む経路を考えた場合、

八面体席は LiAl₂ へ、四面体席は Al₂Si₂ に近づいていくことになります。


しかしこれは、概念上は成り立ちますが、自然発生的には起こりにくい経路で、実際には、

Li = 1.5 を境に、Li量を変える仕組みそのものが変わります。

Li < 1.5 の方向に進む経路としては、3八面体型を維持したままバランスを調整するよりも、リチウムを含む3八面体型そのものを減らし、リチウムを含まない2八面体型(Al₂)を増やす構成へ移行するほうが、構造的に成立しやすいと考えられます。


この Al₂ という2八面体型は、白雲母の要素であり、もともと安定した八面体席です。

また、レピドライトの要素である3八面体型は、リチウム含有量の下限(Li₁.₅Al₁.₅)で構成されていて、こちらも八面体席は安定しています。

したがって、両者が置き換わっても、四面体席のAl置換量など電荷バランスの調整がまったく必要ありません。

そのため、Li が少ないほど2八面体型の構成が多く、Li が増えるにつれて3八面体型の構成が増えていくといった具合に、両者の比率によってLi量を変化させることができます。


このように、構成要素の分布のしかた(比率)で Li含有量が変化するという点では、レピドライト系列と似ています。

ただし、レピドライト系列では一つの構造内で成分比が連続的に変化するのに対し、含リチウム白雲母では異なる構造の存在比が変化します。

一般に、前者のような変化を「固溶体」と捉え、後者とは区別されます。

レピドライトの構造を考えるうえでは、リチウムとともにフッ素(F)の存在も欠かせません。

フッ素は陰イオン(−)であるため、これまでみてきた Li、Al あるいは Si などの陽イオン(+)とは様子が異なります。

それは、八面体席や四面体席といった中心となる場所ではなく、八面体配位を構成する水酸基(OH)と同じ位置に入ります。

そして、フッ素は F⁻、水酸基は OH⁻ で、どちらも−1の電荷を持っているため、過不足を生じることなく置き換わることができます。

レピドライト(一般式):K(Li,Al)₃(Si,Al)₄O₁₀(F,OH)₂

レピドライトの化学式にみられる (F,OH)₂という表記は、この同じ席をFとOHが分け合っていることを表しています。

では、どうしてOHの一部がFに置き換わるのでしょうか?


そもそも、OHとFはどちらもこの陰イオン席を占めることができ、実際にどちらが多く入るかは、形成環境におけるフッ素と水の存在量、および結晶構造がどちらを受け入れやすいかによって決まります。


存在量でいうと、フッ素は地殻中で比較的広く存在してはいますが、一般的な形成環境では、水に由来するOHのほうが、フッ素を大きく上回っています。

そのため、多くの雲母ではOHが主体となっています。

しかし、これはフッ素がまったく入らないという意味ではなく、実際には、OHの一部がFに置き換わっている場合も広くみられます。

ただ、あくまで一部の置換にとどまるケースが多いため、理想的な組成を表す化学式上は、(OH)₂ になっています。

白雲母:KAl₂AlSi₃O₁₀(OH)₂
鉄雲母:KFe²⁺₃AlSi₃O₁₀(OH)₂
金雲母:KMg₃AlSi₃O₁₀(OH)₂


一方、レピドライトが形成されるような花崗岩質ペグマタイトでは、マグマの結晶化が進む過程で、リチウムとともにフッ素も残液中に濃縮されていきます。

そのため、一般的な雲母が形成される環境と比べて、結晶構造内に取り込むことのできるフッ素が多く存在する環境となっています。

ただし、レピドライトにフッ素が多く取り込まれる理由は、形成環境にフッ素が多いというだけではありません。


結晶構造そのものにも、フッ素を受け入れやすくする特徴があります。


雲母の結晶構造に注目すると、2八面体型ではOHが入りやすいのに対し、3八面体型ではOHよりもFが入りやすい傾向がみられます。

この構造的な ”F置換の起こりやすさ” には、結晶構造内に生じる「電場(でんば)」が関係しています。


電場とは、『電荷が周囲の空間に及ぼす影響』を示したもので、磁石の「磁場」と同じようなものです。

全体として電荷バランスが安定している結晶構造内でも、場所によって「正電荷の影響が強い場所」と「負電荷の影響が強い場所」が存在し、局所的にみれば、静電的な引力や反発が働いています。

ここで重要になるのが、OH⁻とF⁻の構造上の違いです。


どちらも−1の電荷を持つ陰イオンですが、F⁻は一つの原子からなるため方向性を持たないのに対し、OH⁻はOとHが結合しているため、結晶構造内でHがどちらを向くかという方向性を持っています。

そのためOH⁻は、周囲の局所的な電場との関係によって、安定して入りやすい配置と入りにくい配置が生じます。

対して、F⁻にはこのような方向性がないため、OH⁻とは結晶構造内での受け入れられ方が異なります。


ここで、『雲母の基本構造』で示した八面体の構造図に、O-H結合を書き加えると、下図のようになります。

負の性質のOが、陽(+)の中心イオンに引きつけられ、八面体配位に組み込まれた形になります。

正の性質のHは、反発を避けるように外側になり、中心イオンから離れた方向を向きます。


これを八面体層として見たとき、

空位を持つ2八面体型では、このHの出っ張りを空位側に逃しています。

また、空位のスペースは中心イオン(+)の不在により、電場がマイナス寄りになっているので、正の性質を持つHを引き寄せる力が同時に働いています。

したがって、Hを空位側に向けることで水素結合(Hが、近くの酸素原子との間につくる弱い結びつき)による安定化も得られ、空間的にも静電的にも安定した配置をとれるため、2八面体型は構造的にOHが入りやすいと考えられます。


これに対して、3八面体型は空位がないだけでなく、Hは隣接する八面体の中心イオンからも等しく距離をとらなければならなくなります。

その結果、Hの向きは八面体層に対してほぼ垂直、つまり上に逃げることになります。

しかし、それにより今度は、その先にある層間の K⁺ に近づくことになり、そこで静電的な反発が生まれます。

これが、構造的な不安定要素となるため、3八面体型では、そもそも方向性をもたない F の方が構造的には適しているといえます。


ただし、一般的な雲母のように、四面体層にAl置換が起きている場合は、この不安定要素がある程度緩和されます。

四面体層でAl置換が起こると、Si⁴⁺ → Al³⁺ というプラス電荷の減少によって、周囲の酸素原子の電場が相対的に強まり、マイナス寄りになります。

この酸素原子のうち八面体層と結合している頂点酸素に、上向きになったHが引き寄せられて水素結合をすることで安定が得られるためです。


ところが、レピドライトのようにリチウムを含む雲母の場合、リチウム量が増えるにつれて、四面体のAl置換が減少していくため、この水素結合による安定が得られにくくなっていきます。

したがって、ポリリチオナイトに近づくほど、Fに置き換わりやすくなると考えられます。


ここまでが述べてきたのが、相対的にどちらが入りやすく、より安定しやすいかという傾向についての分析です。

今回の記事では、FとOHの置換関係を含めて捉えるため、トリリリオナイト、ポリリリオナイトともに一貫して (F,OH)₂ と表記してきました。


一方で、理想的な端成分の表記を、

トリリチオナイトを  KLi₁.₅Al₁.₅AlSi₃O₁₀F₂
ポリリチオナイトを  KLi₂AlSi₄O₁₀F₂

とする場合もあります。


この表記の違いは、理想式として捉える視点と、実際の鉱物にみられる傾向から捉える視点の違いによるものです。

レピドライトを象徴する紫色〜ピンク色は、おもに結晶中へ少量取り込まれたマンガン(Mn)によるものです。

一般に、マンガンの影響が大きいほどピンク〜紫系の発色が強くなり、色が濃くなっていく傾向があります。

ちなみに、レピドライトの特徴的な主成分であるリチウム自体は、色の直接的な原因にはなりません。


このマンガンはレピドライトの化学式には含まれず、レピドライトを定義する必須元素ではないため、マンガンをほとんど含まない白色や灰色、無色に近いレピドライトも存在します。

ただ、リチウムを多く含む環境にはマンガンも共存しやすく、実際にレピドライトでは、マンガンが取り込まれるケースが多いため、事実上、紫色〜ピンク色がレピドライトを代表する色として定着しています。


マンガンの扱いは、成分的には「不純物」になりますが、ここでいう不純物とは、結晶構造の外に混じった異物という意味ではなく、結晶構造の一部を置き換える形で取り込まれた「必須ではない微量成分」です。

結晶構造内では、主に八面体席に入り、そこを占めているLiやAlなどの一部を置き換える形で取り込まれます。


白雲母などでは板状の結晶がよくみられるのに対し、レピドライトは微細な結晶が鱗状に集まった形で産出することが非常に多いです。


微細な鱗片状結晶となる明確な要因はわかっていませんが、形成時の環境変化や結晶成長条件などが関係していると考えられます。

また、レピドライトではLiとAlの割合などによって局所的な構造の歪みが変化することも知られており、こうした構造上の特徴が結晶成長に影響している可能性もあります。


ただし、直接的な因果関係が確認されているわけではなく、現時点ではひとつの可能性として捉えるのが適切です。

レピドライトの形成では、リチウムに富むペグマタイト末期のマグマ残液から結晶化していく過程が基本となります。

このように形成されたレピドライトは、ある程度まとまった結晶や集合体としてみられる場合が多くあります。

しかし実際には、それだけでなく、ペグマタイトの形成がさらに進む中で、残液から分かれたリチウムやフッ素、水分を多く含む成分が、すでに形成されていた白雲母に作用し、その一部がレピドライト質へ置き換わる場合もあります。


白雲母とレピドライトは、同じ雲母の仲間として基本的な層状構造が同じであるため、リチウムやフッ素などの成分が出入りして、内部の構成を組み替えることができます。

そのため、いちど白雲母が形成された後であっても、周囲がリチウムやフッ素に富む環境へ変化すると、その影響を受けた部分では、白雲母のままの構造を維持するよりも、リチウムやフッ素を取り込んだ雲母へ組み替わるほうが安定になる場合があります。

こうした置換は、成分が入り込みやすい縁(ふち)や割れ目、劈開面などから進みやすく、白雲母の一部が変化するだけでなく、白雲母とレピドライト質の部分が細かく混在したりする形で現れることもあります。

終わりに

レピドライトは、典型的な雲母に比べると、構造が少し複雑です。

しかし、ほんとうに複雑なのは、構造そのものよりも、組成にリチウムを含むことで必要となるバランス調整です。

リチウムとアルミニウムによる八面体席の比率の調整
それに連動する四面体席のAl置換量の調整


さらに、含リチウム白雲母まで含めて考えると、

2八面体型と3八面体型の比率の調整

も必要となります。


また、こうした構造内の調整にともなって、

OHとFによる陰イオン席の比率

にも変化が生じます。


このような幾つもの調整が互いに関係しながら作用していることが、理解を複雑にしています。

これら個々のつながりは、ある程度深掘りしないと見えてこないため、今回はかなりボリュームのある内容となってしまいました。

「なぜそうなるのか?」という疑問の答えが、ひとつひとつ繋がっていくことで、レピドライトという石の全体像がよりはっきり見え、理解が深まる一助となれば幸いです。



次回は、雲母の最終章「フックサイト」を予定しています。



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