自然界で見られるガーネットの結晶は、特に岩石中で見つかるものは小さく、コロコロした形をしていることが多いです。
その姿が柘榴(ざくろ)に似ていることから、「柘榴石」という和名が付けられています。
結晶の形状は、菱形十二面体(りょうけいじゅうにめんたい)が最も典型的ですが、
凧形二十四面体(たこがたにじゅうしめんたい)なども見られます。
鉱物的な特性
「ガーネット」は一つの鉱物名ではなく、”類質同像(るいしつどうぞう)” (同形)をとる鉱物群のグループ名です。
つまり、ガーネット族またはガーネット群、ということになります。
”類質同像” とは、『同じ結晶構造を持つが、化学組成(成分)がちょっと違う』という現象です。
「同質異像(どうしついぞう)」(多形)と似た言葉なので混同しそうですが、
これらの言葉の「質」は「化学組成(中身の成分)」で、「像」は「結晶構造(形や外観)」を指しています。
【ガーネット(柘榴石)】
化学組成(成分): X3Y2(SiO4)3
※一般式
結晶構造(結晶系): 等軸晶系
”同像” なので、結晶構造は「等軸晶系(とうじくしょうけい)」で共通しています。
成分は、一般式で表すと「X3Y2(SiO4)3」になります。
すべてに共通して「SiO4(ケイ酸塩)」 を含んでいるので、ガーネットは ”ケイ酸塩鉱物” です。
式中の
Xには、カルシウム(Ca)・マグネシウム(Mg)・鉄(Fe・二価)、マンガン(Mn)が入ります。
Yには、アルミニウム(Al)・鉄(Fe・三価)・クロム(Cr)が入ります。
これらX、Yの組み合わせにより異なる種類のガーネットが形成されます。
鉱物学的には16種類あるともいわれていますが、
宝石・天然石として市場に流通しているのは、主に6種類です。
それらは共通する成分によって、
アルミニウム系(赤色系)の3種類、
カルシウム系(緑色系)の3種類
に分けられます。
アルミニウム系
成分に共通してアルミニウムを持つ赤色系のガーネットグループです。
「パイラルスパイト系統」とも呼ばれます。
パイロープ・ガーネット:
苦礬柘榴石(くばんざくろいし)
Mg3Al2(SiO4)3
マグネシウム
アルミニウム
ケイ酸塩
鮮やかな赤色
アルマンディン・ガーネット:
鉄礬柘榴石(てつばんざくろいし)
Fe2+3Al2(SiO4)3
鉄(二価)
アルミニウム
ケイ酸塩
深い赤色
スペサルティン・ガーネット:
満礬柘榴石(まんばんざくろいし)
Mn3Al2(SiO4)3
マンガン
アルミニウム
ケイ酸塩
明るいオレンジ色
(別名:マンダリンガーネット)
これら3種は「端成分(たんせいぶん)」と呼ばれ、赤色系ガーネット族の中で、
もっとも純粋な成分で構成されたものです。
それぞれの成分を構成する「Fe(鉄)」「Mg(マグネシウム)」「Mn(マンガン)」は、
性質が似ているため、自然界では混ざり合ったり、入れ替わったりして存在しています。
このような端成分どうしが混ざり合ったものを「固溶体(こようたい)」といいます。
また、混合の割合が任意で、連続して固溶体を形成する場合を、
とくに「連続固溶体」と呼びます。
パイロープとアルマンディンの中間成分を含んだ固溶体としては、
ロードライト・ガーネット:薔薇柘榴石(ばらざくろいし)
(Mg,Fe)3Al2(SiO4)3
がとくに有名です。
紫がかった赤色が特徴的で人気があります。
パイロープとスペサルティンの中間としては、
マラヤ・ガーネットが知られています。
ロゼワインのようなピンク系の色合いを示します。
パイロープ/スペサルティンの中間タイプには、アレキサンドライトのように光源によって色が変化するものもあります。
赤色系のガーネットの中で最も一般的に流通している種類は、アルマンディン・ガーネットです。
多くの人々がガーネットと聞いて想像する典型的な色です。
スターガーネット:
特にアルマンディンガーネットに見られることが多い、4条や6条の光の筋が現れる「スター効果(アステリズム)」を持つものを指します。
カルシウム系
成分に共通してカルシウムを持つ緑色系のガーネットグループです。
「ウグランダイト系統」とも呼ばれます。
赤色系と同様に、端成分となるのは次の3種類です。
ウバロバイト・ガーネット:
灰クロム柘榴石(かいクロムざくろいし)
Ca3Cr2(SiO4)3
カルシウム
クロム
ケイ酸塩
ウバロバイト・ガーネットは、カットできるような大粒の結晶はほとんど産出されません。
グロッシュラー・ガーネット:
灰礬柘榴石(かいばんざくろいし)
Ca3Al2(SiO4)3
カルシウム
アルミニウム
ケイ酸塩
アンドラダイト・ガーネット:
灰鉄柘榴石(かいてつざくろいし)
Ca3Fe3+2(SiO4)3
カルシウム
鉄(三価)
ケイ酸塩
グロッシュラー・ガーネットに属するもの。
ツァボライト・ガーネット:
一般に「グリーンガーネット」と言えば、鮮やかな緑色を示すツァボライトガーネットを指すことが多いです。
緑色の発色は、クロムとバナジウムに起因しています。
ヘソナイト・ガーネット:
オレンジ色から褐色の色合いが特徴です。
リューコ・ガーネット:
名前の「リューコ」はギリシャ語で「白い」を意味する言葉に由来します。
ほぼ無色透明で、カラーレスガーネット、ホワイトガーネットと呼ばれることもあります。
アンドラダイト・ガーネットに属するもの。
デマントイド・ガーネット:
翠柘榴石(すいざくろいし)
鮮やかな緑色が特徴で、ダイヤモンドに匹敵する高い屈折率と分散度を持つことで有名です。
しばしば馬の尻尾のような「ホーステール」と呼ばれるインクルージョンがあることもデマントイドの大きな特徴です。
元々の構成成分である鉄にクロムが含まれることで緑色に発色します。
トパゾライト・ガーネット:
黄色から茶色の色調を示し、名前はそのトパーズに似た色から来ています。
メラナイト・ガーネット:
通常は黒から暗い茶色を示し、透明度は低いです。
その他:
アンドラダイトの変種で、光の屈折により虹色の輝き(イリデッセンス)を示すものを指します。
奈良県の天川村産が知られていますが、現在は採掘が禁止されているようです。
緑色系の端成分では、
ウバロバイトが持つ「Cr(クロム)」は他と入れ替わりにくいため、固溶体は部分的になります。
グロッシュラーとアンドラダイト間では、連続的な固溶体が作られるため、
中間タイプが存在します。
それが、マリ・ガーネットです。
黄色から黄緑色の範囲で、アルミニウムと鉄の割合によって色が変わります。
終わりに
ガーネットには、非常にたくさんの色があります。
ここで紹介したガーネットの色合いは、代表的なものにすぎませんので、参考程度に思ってください。
実際には、同じ種類のガーネットでも色調に幅があり、
他のカテゴリーと区別つかないほど似通った色合いになる場合もあります。