【第13回】さまざまな長石

長石(フェルドスパー)は、地球の地殻を構成する最も一般的な鉱物群で、地殻の約60%を占めています。

主に、カリウム(K)、ナトリウム(Na)、カルシウム(Ca)から構成されるアルミノケイ酸塩です。

アルミノケイ酸塩とは

ケイ酸塩鉱物の一種で、ケイ素(Si)と酸素(O)からなるシリカと、アルミニウム(Al)が結合して形成されています。


長石の分類

長石には多くの種類がありますが、分類の基盤となるのは端成分である3つの長石です。

  1. カリ長石(K-feldspar)

    カリウム(K)を主成分とする長石。
    以下の2つに分けられます。

    • 正長石(せいちょうせき)
      オーソクレース(orthoclase)

    • 微斜長石(びしゃちょうせき)
      マイクロクリン(microcline)


  2. 曹長石(そうちょうせき)
    アルバイト(albite)

    ナトリウム(Na)を主成分とする長石。


  3. 灰長石(かいちょうせき)
    アノーサイト(anorthite)

    カルシウム(Ca)を主成分とする長石。


そして、これらの端成分による固溶体は次の2系列に分けられます。

  1. アルカリ長石

    カリ長石 – 曹長石(アルバイト)間で形成される長石の総称。


  2. 斜長石(しゃちょうせき)
    プラジオクレース(plagioclases)

    曹長石(アルバイト)- 灰長石(アノーサイト)間で形成される長石の総称。


これをもとに分類すると、下の図のようになります。



※図中の「溶解度間隙(miscibility gap)」とは、成分的に自然界には存在しない領域のことです。


長石の種類

【アルカリ長石】系列

カリ長石〜曹長石(アルバイト)までの長石。

端成分(カリ長石)
  • 正長石(オーソクレース)
    KAlSi3O8 単斜晶系

    中温域(約500°C〜900°C)で形成されたカリ長石。
    正長石は様々な色を示すことが知られています。
    一般的な色は白や無色ですが、ピンク、オレンジ、茶色、灰色などの色も見られます。



  • 微斜長石(マイクロクリン)
    KAlSi3O8 三斜晶系

    低温域(約400°C以下)で形成されたカリ長石。
    正長石とは成分が同じで結晶系が異なる多形ですが、見た目にはほとんど区別がつかない。
アマゾナイト(天河石)


微斜長石のなかで青緑色をしたものは「アマゾナイト」と呼ばれています。
これは流通名または宝石名です。

微量の鉛イオンを含むことで発色しています。

アマゾナイトは、白い部分が霜降り状に入っていることも多いですが、この白色はアルバイト(曹長石)です。

高温で形成されたアルカリ長石(固溶体)が冷却される過程で、
カリウムが多い部分(微斜長石)とナトリウムが多い部分(曹長石)に分離することがあります。

これにより、微細な層状または斑点状の構造が形成されます。
これを「パーサイト構造」といいます。


固溶体

アルカリ長石系列の固溶体は、高温では完全な混合が可能ですが、温度が下がるとカリウムとナトリウムが互いに分離し、パーサイト構造などの不均一な構造が現れるのが特徴です。
ゆっくり冷却される環境では、この傾向が顕著になります。

  • サニディン
    玻璃長石、はりちょうせき)
    (K,Na)AlSi3O8 単斜晶系

    高温で安定する長石であり、約900°C以上で形成されます。
    火山岩(流紋岩や粗面岩など)に多く見られます。
    ナトリウムを少し含む。


  • アノーソクレース
    (曹微斜長石、そうびしゃちょうせき)
     (Na,K)AlSi3O8 三斜晶系

    サニディンよりやや低温で安定し、約650°Cから900°Cの温度範囲で形成されます。
    サニディンよりもNaを多く含む。

ムーンストーン(月長石)


ムーンストーンとは宝石名であり、アルカリ長石の中で、内部構造によって光を散乱し、白または青白い光(アデュラレッセンス)を示すものを指します。

シラーとも呼ばれるこの特徴的な光学効果は、サニディンやアノーソクレースなど高温で形成された固溶体が冷却される過程で分離し、
オーソクレース(正長石)とアルバイト(曹長石)の薄い膜が交互に層状構造(パーサイト構造)を形成することによって生じます。

※典型的なムーンストーンの場合。


【斜長石(プラジオクレース)】系列

曹長石(アルバイト)〜灰長石(アノーサイト)までの長石。

端成分
  • 曹長石(アルバイト)
    NaAlSi3O8 三斜晶系

    ナトリウムに富む長石。
    火成岩や変成岩に普通に含まれる鉱物で、灰長石と連続固溶体をつくる。


  • 灰長石(アノーサイト)
    CaAl2Si2O8 三斜晶系

    カルシウムに富む斜長石。
    曹長石と同様に火成岩や変成岩に含まれる鉱物で、連続固溶体を形成する。


固溶体

斜長石系列の固溶体は、アルバイト(曹長石)とアノーサイト(灰長石)の比率に基づいて細かく分類されています。

※ただし、現在は「50%ルール」によって簡略された分類になっています。


  • 灰曹長石(かいそうちょうせき)
    オリゴクレース
    (NaAlSi3O8)90-70(CaAl2Si2O8)10-30
    三斜晶系

    ナトリウム(Na)とカルシウム(Ca)の混合比が、
    9:1 〜 7:3 の範囲のものを指します。
サンストーン(日長石)


オリゴクレースのなかでも、ヘマタイト(赤鉄鉱)ゲーサイト(針鉄鉱)レピドクロサイト(燐鉄鉱)またはなどを微量に含むことにより赤色を呈していて、アベンチュレッセンスが見られるものをサンストーンと呼んでいます。

※別名「ヘリオライト」


  • 中性長石(ちゅうせいちょうせき)
    アンデシン
    (NaAlSi3O8)70-50(CaAl2Si2O8)30-50
    三斜晶系

    NaとCaの比率は、7:3 〜 5:5

    透明から半透明で、色は通常、白、灰色、緑色、または赤色のトーンがあります。



  • 曹灰長石(そうかいちょうせき)
    ラブラドライト
    (NaAlSi3O8)50-30(CaAl2Si2O8)50-70
    三斜晶系

    Na:Ca 比は、5:5 〜 3:7

    ラブラドル長石とも呼ばれ、灰色から黒、暗い青灰色が一般的ですが、白色も見られます。
    内部に微細な層状構造(ラメラ構造)を持つのが特徴で、これらの層が光を反射し干渉することで、ラブラドレッセンスと呼ばれる光学効果を生み出します。


ホワイトラブラドライト


一般に「レインボームーンストーン」と呼ばれるものは、鉱物的にはラブラドライトの透明または乳白色の形態であり、本来のムーンストーン(オーソクレースやアルバイトが主成分)とは異なります。

スペクトロライト

フィンランドユレマという地域で産出されるラブラドライトで、通常よりも鮮やかな色彩を持ち、モザイク模様のような干渉色を示すものを、とくに「スペクトロライト」と呼んでいます。

多彩な色のスペクトルを反映することから名付けられました。



  • 亜灰長石(あかいちょうせき)
    バイトゥナイト
    (NaAlSi3O8)30-10(CaAl2Si2O8)70-90
    三斜晶系

    Na:Ca 比は、3:7 〜 1:9

    バイトゥナイトは、無色から白、灰色、そして薄い黄色などさまざまです。
    特に大きな結晶や目立った特徴がなく、他の長石類に比べて注目されにくいため、一般的にはあまり知られていません。



  • その他の固溶体
ペリステライト

ペリステライトは特殊な固溶体として位置づけられ、NaCa比率による分類には属しません。
化学式は NaAlSi3O8

成分的にはアルバイトとオリゴクレースの中間の組成を持ちますが、不均一な混合により、微細な層状構造(ラメラ構造)が形成されることがあり、ムーンストーンに似たシラー効果を示します。

それゆえ「ロイヤルブルームーンストーン」の名称で流通していることが多いです。

一般的なムーンストーンより透明感があり、非常に鮮やかで深い青色のシラー効果を示すのが特徴です。


終わりに

長石は成分的な多様性を持つ鉱物グループであるため、特定の長石をピンポイントで説明しても今ひとつ分かりにくい気がします。

なので、全体像がつかめるように、馴染みのない長石も含めて話を進めました。

ひとつひとつの名称を覚える必要はないので、メジャーな長石が分類図の中で、だいたいどの辺に位置するかイメージできれば幸いです。

また、それらが持つ光学効果やその構造は特徴的なので、違いを把握しやすいと思います。


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