【第7回】「輝き」のしくみ

「輝き」の要因

輝きって何によって決まるの?


鉱物の ”輝き” は主に、

  • 光沢(こうたく)」
  • 屈折率(くっせつりつ)」
  • 分散度(ぶんさんど)」
  • 光の散乱(さんらん)」

によって生み出されます。

『光沢』とは

一言でいえば、
「表面が光っていること」です。


とくに不透明な石は、光を通さないので ”光沢” が輝きを決定します。


光沢は、『表面で反射される光の輝き』であるため、

その表面が滑らかで均一であるほど光沢が増します。


光の拡散が少なく、反射が一定方向に集約されたほうがより強い光沢になるのです。

最も滑らかで均一な表面での反射を
「鏡面反射(きょうめんはんしゃ)」といい,
鏡のような強い光沢を生みます。



これとは逆に、

表面が凹凸であったり、粗く均一でない場合は、光が秩序なく様々な方向に散らばります。


これを「拡散反射(かくさんはんしゃ)」または「乱反射(らんはんしゃ)」といい、

その度合いが大きいほど、光沢のない、マットな質感になります。

光沢の種類

金属光沢
非常に強い反射を示し、金属のように見える光沢。

代表的な石:
黄鉄鉱ヘマタイト(赤鉄鉱)など。


ダイヤモンド光沢(金剛光沢):
ダイヤモンドにおいて最も顕著にみられるような強い光沢

代表的な石:
ダイヤモンドジルコン


ダイヤモンド光沢よりやや劣るが、強いガラス光沢を持つもの
『亜金剛(あこんごう)光沢』と分類することもあります。

代表的な石:
モアッサナイトキュービックジルコニア、
コランダム(ルビー、サファイア)、
スフェーンスピネル


ガラス光沢
ガラスやほとんどの結晶質鉱物が示す、ガラスのような光沢。

代表的な石:
石英長石方解石緑柱石電気石蛍石
ほか多数。


樹脂光沢
樹脂のように少し暗い輝きを持つ光沢。

代表的な石:
琥珀


真珠光沢
真珠のようなやわらかい反射を持つ光沢。

代表的な石:
真珠マザーオブパール雲母など。


絹糸(けんし)光沢
絹のような滑らかで繊細な光沢。

代表的な石:
タイガーアイ


蝋(ろう)光沢
蝋のように柔らかくぼんやりとした光沢。

代表的な石:
翡翠ターコイズカルセドニー


脂肪光沢
表面が油で覆われているような見た目の光沢。

代表的な石:
オパール


『屈折率』とは

透明な石の場合は光を通すので、光の「屈折率」「分散度」が輝きの重要な要素となってきます。


このふたつは数値によって表されるため、特に『宝石』のカテゴリーではよく用いられます。

「透明度」ももちろん重要な要素ですが、
ある程度透明であることが前提での話になります。


透明な石に光が当たったとき、石の中に入った光はわずかに曲がります。

どうして曲がるの?


それは、「空気中と石の中とでは、光の進む速度が違う」からです。


速度の違いによって光は、石の中に入った瞬間に進行方向が変わります。


これが『屈折』(くっせつ)です。

鉱物(石)の中では、光の速度が遅くなります。


その際にどれくらい曲がるのかを表したものが『屈折率』です。

「屈折率」には、「相対屈折率」「絶対屈折率」がありますが、
わかりやすくするため、ここでは区別しません。


物質はそれぞれ固有の「屈折率」を持っていて、

屈折率が高いほど(数値が大きいほど)「輝き」が増す傾向にあります。

たとえば最高クラスの屈折率を誇るダイヤモンドは、約2.42 です。

ちなみに、水晶約1.54 です。

どうして輝きが増すの?


屈折率が高くなると、逆に光はその物質から外には出にくくなるのです。

外に出ていける角度(臨界角という)が狭いのです。



そのため多くの光が内部に閉じ込められる状態となり、内部反射を繰り返します。

これを「全反射(ぜんはんしゃ)」といいます。



その結果、最終的に外に出られた光は様々な角度に散らばるため、

より多くの方向からキラキラと輝いて見えるようになります。


またその際も、ある程度集められた光が出ていくので、強い輝きを放ちます。




また、表面での反射(光沢)も屈折率の高さに比例して大きくなります。


屈折率が高い
=その物質の中では光の速度がより遅い
(光がより減速する)
=それだけ光が通りにくい
(ある意味抵抗が大きい)
=その分、押し返される光の量も多くなる
=つまり、反射率が高い

透明でもすべての光が石の中に入るわけではなくて、
反射される光もあるということです。



このため、高い屈折率のダイヤモンドは反射率も高く、特に強くて明るい光沢を持ちます。


「ダイヤモンド光沢」と呼ばれる所以です。


『分散度』とは

光は、いろんな色が重なり合っています。


その色の違いは、「波長」の違いでもあります。

実際は、はっきり色分けされているわけではなくて、
グラデーションになっているため、無数の色があります。




そして、光が屈折するとき、

それぞれの色(波長)の光は、異なる屈折率で曲がります。

波長が短いほど屈折率が高くなります。
よって「赤」が最も弱く「紫」が最も強く曲がります。




色による屈折率の違いが大きくなると、重なり合っていた光は分散して見えます。


この分散の度合いを『分散度』(ぶんさんど)といいます。


分散度が高い = 色ごとの屈折差が大きい



光が分散すると、色分けがよりはっきりするため色彩豊かな美しい「輝き」になります。


ん?屈折率って物質ごとに決まっているのでは?

物質固有の屈折率は、黄色の光基準にしています。



一般に、「屈折率」が高い物質は「分散度」も高い傾向にありますが、

強く屈折しても、色の分離がなければ(色ごとの屈折の差が大きくなければ)

分散の効果は少なくなるので、必ずしも比例しているわけではありません。

ダイヤモンドは分散度も高く、その値は 約0.044 です。
これにより「ファイア」と呼ばれる虹色の輝きが生まれます。

平均的な数値は、
水晶の 約0.013 程度です。


『光の散乱』とは

半透明な石にみられるような不純物内包物(インクルージョン)を含んでいる場合や、

クラック(ひび割れ)が入った石は、

それらによって光が不規則な方向に進路を変えます。


これを「光の散乱」と言い、特有の輝きを生み出します。


それは、複雑な内部反射によるきらきら感であったり、

光の分離(分散)による色彩感であったり様々な効果を与えます。

「分散」とか「散乱」とかややこしいわね。

たしかに…(汗



● クラックや不純物による
光の分離(レインボー)の例:水晶


光がランダムな方向に散らばるという点では、
「乱反射」または「拡散反射」と同じですが、
表面ではなく物質の内部で生じるため、このような輝きの要因になります。



乱反射は光沢を減少させますが、光の散乱は輝きを増加させます。



タイトルとURLをコピーしました