【第9回】アベンチュリンは水晶?

アベンチュリンって、
和名で「砂金水晶」とか「砂金石英」って書いてあるけど、
水晶なの?

その答えは、
イエスでもあるし、ノーでもある。

???

どうして、こういう答えになるか見ていきましょう。


「アベンチュリン」と「グリーンクォーツァイト」

広く一般的に流通しているアベンチュリンといえばこちらです。

翡翠に似た美しい緑色をしているため「インド翡翠」の別名でも知られています。


この石は、正確には『グリーンクォーツァイト』と呼ばれるものです。

クォーツァイトとは

和名を「珪岩(けいがん)」といい、石英鉱物を主成分とする変成岩です。

変成岩は、既存の岩石が高圧や高温などの条件下で化学的に変化し、新しい岩石に変質するプロセスを経て形成されます。

クォーツァイトはその変成過程で、元の岩石に含まれていた石英粒子が再結晶化してできたもの。


ちなみに分類上は岩石であり、単一の鉱物ではありません。

※「鉱物」と「岩石」の違いはこちら


石英鉱物から成る石(岩石)ではあるけれども、

石英(水晶)とは違うくくりで扱われます。


なので、”アベンチュリン” がこの石のことを指しているのならば、
質問の答えは、『ノー』になります。



こちらは「グリーンアベンチュリンクォーツ」とも呼ばれるキラキラした輝きを持つアベンチュリン。


「アベンチュレッセンス」と呼ばれる光学現象は、

このアベンチュリンの特徴的な輝きが語源になっています。


そして、鉱物学的に ”アベンチュリン” といった場合は、

この「グリーンアベンチュリンクォーツ」のことを指します。

【アベンチュリン】
和名:砂金水晶 または 砂金石英
組成式:SiO₂(フックサイトなどの内包物あり)
結晶系:六方晶系


成分や構造などは、石英(水晶)と同じです。

したがって、本来の ”アベンチュリン” という意味でいえば、
質問の答えは、『イエス』になります。



市場における「石の名称」

市場においてはよくあることですが、

もともとは違う石が、似たような外観や特徴を持っていることなどから

同じように扱われ、やがて同じ名称で呼ばれるようになるケースがあります。


アベンチュリンはその一例です。



もともとは「グリーンアベンチュリンクォーツ」のことを指していたものが、

しだいに「グリーンクォーツァイト」もアベンチュリンと呼ばれるようになり、

今では、こちらが主流ともいえるほど認知されています。


市場での「石の名称」は、いわゆる『通称』なので、

世間一般に使用されていて、それがどういうものか認知されている名前です。


正式名称とか鉱物名とかは、また別の話です。


なので、「グリーンクォーツァイトはアベンチュリンじゃない!!」

という見解は少し短絡的です。


勝手に名称を偽っているならともかく、

”通称” アベンチュリンという名前での取引には、グリーンクォーツァイトも含まれているのが一般的だからです。


とはいえ、専門的な視点から見れば、
それらは異なる石であると理解しておくことは大事です。




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