【第2回】SiO₂ とガラス

非晶質とは?

前回の話では、

SiO₂ の結晶系の違いによって、石英以外にも様々な鉱物が存在することに言及しました。


そこでは触れませんでしたが、

SiO₂ が結晶じゃなかったら、何になるの?

について今回お話します。


おさらいですが、

結晶とは

原子、分子が、規則正しく配列している

という状態を指します。


この結晶構造を持った固体物質を「結晶質とも呼びます。


これに対して、不規則な配列をしている固体物質は「非晶質(ひしょうしつ)と言います。


結晶質以外の固体はすべて ”非晶質” です。
つまり、固体物質は結晶質か非晶質のどちらかに分類されます。

自然界に存在する固体物質(石)でいうと、
”結晶質” が圧倒的に多いです。



“非晶質” も固体の一形態つまり固相なので、相転移のひとつです。


ですが、すべての固体物質が『非晶質の相』になり得るわけではなくて、

非晶質の相を持つ組成(成分)は限られています。


この点でSiO₂ は、その数少ない組成のひとつであり、またその代表的な存在です。



ガラス質とは?

SiO₂ の結晶していない状態(非晶質)は、「ガラス質」です。

ガラス質とは「ガラスのような性質を持つ物質」
という意味です。


前回、SiO₂ の相転移のところでは説明しませんでしたが、

図にあるとおり ”ガラス質” は SiO₂を含んだ液体(SiO₂溶解液)が、

急速に冷却することで形成される物質です。


”結晶” の形成、すなわち原子・分子が規則正しく配列するためには
SiO₂溶解液がゆっくり冷え固まるというプロセスが必要不可欠です。

急冷によって結晶化までの時間がない場合、
原子・分子は不規則でバラバラな状態のまま固まります。



自然界のガラス質

じゃあ自然界にはどんなガラス質が存在するの?


代表的なのは、火山の噴火によってできた「オブシディアンです。

オブシディアンは SiO₂ が主成分(約70-75%)の天然ガラスです。



また、隕石の衝突によってできた「モルダバイト「リビアングラス

同じく天然ガラスとして知られています。


モルダバイト

  • SiO₂(二酸化ケイ素): 約70-80%

リビアングラス

  • SiO₂(二酸化ケイ素):約97-98%

隕石の衝突と関連して形成される天然ガラスは、
総称して「テクタイトと呼ばれます。

モルダバイトもリビアングラスもテクタイトの一種。



このように、自然界のガラス質はかなり特殊な環境で形成される物質です。



地表のほとんどが結晶質の物質でできているのは、

地殻の形成自体が、結晶の形成プロセスそのものであるためです。



火山活動や隕石の衝突などは、その地殻の岩石を溶かして、

その後急激に冷却が進むことにより、ガラス質となって再び固まります。



ガラス製品

ソーダライムガラス

では、日常で広く使われているガラスはどうなのでしょう?


窓ガラスや食器などに使用される一般的なガラスを「ソーダライムガラス」といいます。

「ソーダ石灰ガラス」とも呼びます。



ソーダライムガラスは、主成分としてSiO₂(二酸化ケイ素)を含んでいますが、

その含有率は天然ガラスよりもやや低くなります。


一般的なソーダライムガラスのSiO₂含有率は、約70%程度です。




その他の成分はガラスの性質(色、硬さ、耐熱性など)を調整するために加えられる添加物です。

  • ナトリウム酸化物(Na2O)約20%
    「ソーダ」として知られており、ガラスを融解しやすくするために添加されます。

  • カルシウム酸化物(CaO)約10%
    「ライム」として知られ、ガラスの耐久性と安定性を向上させるために使用されます。



石英ガラス

石英ガラスとは「100%(不純物以外) SiO₂ から作られたガラス」を指します。


他のガラスと区別して、あえて ”石英ガラス” と呼んでいるのは、

高い純度が求められる特定の用途で使用するためのガラスだからです。


半導体や光ファイバーなど高度な技術を要する分野です。

SiO₂ の ”非晶質” としては、もっとも純粋なガラスです。




まとめ

天然ガラス、人工的なガラス含めさまざまなガラスがありますが、

それらを包括的に捉えて、鉱物学的には、

SiO₂ の非晶質は、”ガラス質” である


と表現するのが一般的です。



『SiO₂ の非晶質は、SiO₂ を主成分とするガラス質である。』


と言えば、さらに正確です。




そして最後に、

『結晶質と非晶質(ガラス質)の識別は、あくまで内部構造によるもの』

という点を押さえてください。


肉眼では区別し難い、
原子・分子レベルの話だということです。

それぞれの特徴や特性に基づいて推測することは可能ですが、
正確な識別には専門的な分析が必要です。




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